着物は種類が豊富なため、結婚式や成人式などのフォーマルなシーンで着用する際、どれを選べばいいか迷ってしまう人も多いでしょう。着物には「格」という観点から、着用シーンが決まっており、選択を間違えてしまうと、場違いの装いになる恐れがあります。
今回は、フォーマルシーンに適した着物の種類や特徴を解説していきます。フォーマルシーンに着るべき着物が明確になるので、ぜひ参考にしてみてください。
着物はTPOに合わせて着分け る
着物にはさまざまな種類があり、それぞれ格式の高さが異なります。
<着物の格式>
- 正礼装(フォーマル):黒留袖(くろとめそで)、振袖 など
- 準礼装(セミフォーマル):訪問着(ほうもんぎ)、色無地(いろむじ) など
- カジュアル:紬(つむぎ)、浴衣 など
大きく分けて3つの格式に分類され、それぞれで着用シーンや着物の種類が変わってきます。まずは着物の格について理解を深め、フォーマルシーンにふさわしい着物を見きわめるようにしましょう。
「女性」がフォーマルシーンで着る着物の種類
女性が着るフォーマルシーンにふさわしい着物は、「正礼装(第一礼装)」と「準礼装(略式礼装)」の2つです。それぞれの特徴をまとめたので確認してみましょう。
正礼装(第一礼装)とは?
正礼装(第一礼装)とは、フォーマルシーンで最も格式が高い着物のことを指します。結婚式や葬儀などの冠婚葬祭で着用するのに適した装いです。
<正礼装の着用が適しているシーン>
- 結婚式や披露宴(主催者側の場合)
- お見合いや結納
- 公的な式典、パーティー
- 成人式
- 葬儀や告別式
後ほど紹介しますが、一口に正礼装と言っても、さまざまな種類があるため、立場や着用シーンに適した着物を選ぶことが大切です。
準礼装(略式礼装)とは?
準礼装とは、セミフォーマルとも呼ばれる、正礼装に準ずる格式の着物のことを指します。また、準礼装よりもカジュアルな着物を指して、「略礼装」と呼ぶ場合もあります。いずれも、フォーマルでありながら、正礼装では過剰だと想定される場面で、着用されるのが一般的です。
<準礼装(略礼装)の着用が適しているシーン>
- 結婚式や披露宴(ゲスト側の場合)
- 七五三やお宮参り
- 入学式や卒業式
- 私的なパーティー
- 葬儀や告別式
- お茶会や観劇鑑賞
正礼装とは別で一着持っておけば、格式張らない式典やパーティーなど、より幅広いフォーマルな場面で重宝するはずですよ。
正礼装(第一礼装)に該当する着物の種類
ここからは、正礼装(第一礼装)としてふさわしい着物の種類を5つご紹介します。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖とは、既婚女性が着用する着物の中で、最も格式が高い装いです。黒地で上半身には柄がなく、裾部分にのみ、縫い目をまたぐ絵羽模様が描かれています。また、背中、両胸元、両後ろ袖の5箇所に紋が入っている点も特徴的です。
結婚式や披露宴などのフォーマルなシーンに適しており、新郎新婦の母親や仲人夫人が着用するのが一般的です。あくまでも新郎新婦に近い立場の人に適した着物であるため、友人などの少し距離のある立場の人は着用しないようにしましょう。
振袖
振袖は、未婚女性が着る格式の高い着物で、成人式や結婚式、発表会などのフォーマルなシーンで着用されるケースが多いです。袖丈によって3種類に分類される点も、振袖の特徴の一つです。
<振袖の種類>
- 本振袖(大振袖)
- 中振袖
- 小振袖(二尺袖)
袖の長さと格式の高さは比例しており、袖が長い本振袖は最も格式が高いとされます。成人式では本振袖を、卒業式で袴を穿く場合は、小振袖を着用するのが一般的です。
黒喪服(黒紋付)
黒喪服は、喪の席で着る格式の高い着物で、喪主や故人の親族が、葬儀や告別式で着用します。
<黒喪服の条件>
- 必ず五つ紋を入れる
- 長襦袢と半衿、足袋は白で統一
- ほかの小物は、できるだけ黒で統一
喪の席での正式な装いでは、地紋が入っていない無地の着物を着用するのが一般的です。
色留袖(いろとめそで)
色留袖とは、黒留袖に準ずる格式のある着物です。上半身は無地で、地色が黒以外の色で染められており、裾部分にのみ絵羽模様が入っています。色が黒ではないことを除けば、黒留袖と特徴が似ていますが、色留袖は既婚女性だけでなく未婚女性も着用することが可能です。
また、着用シーンや目的などにより、紋の数が異なる点も特徴的です。
<紋の数と着物の種類>
- 五つ紋:正礼装
- 三つ紋:準礼装
- 一つ紋:略礼装
五つ紋であれば、黒留袖と同等の格式であるため、結婚式で新郎新婦に近い親族女性が着用する着物として適しているでしょう。
打掛(うちかけ)
打掛は、小袖の上から打ち掛けるようにして羽織る着物のことで、「白無垢(しろむく)」や「色打掛(いろうちかけ)」などの種類があります。
<打掛の種類>
- 白無垢:結婚式における花嫁衣装として着用される
- 色打掛:色と柄が豊富で、華やかさがあり、披露宴のお色直しで着用される
中に着る着物から小物、上に羽織る打掛までを白で統一する様子から、白無垢は「白打掛(しろうちかけ)」と呼ばれる場合もあります。
準礼装(略礼装)に該当する着物の種類
続いて、準礼装(略礼装)に適した着物の種類についても確認しておきましょう。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、振袖や留袖の次に格式の高い準礼装の着物で、既婚・未婚を問わず着用できます。裾部分に絵羽模様が入っている点は、黒留袖や色留袖と同じですが、訪問着は肩から胸や袖にかけて、一つの絵のように柄がつながっています。
カジュアルな場面で着用できる一方、柄が豪華な場合には、一つ紋を入れることで、フォーマルシーンにふさわしい装いにすることも可能です。子どもの行事などのフォーマルな場面から、観劇などの普段使いでも着用できる汎用性の高い着物と言えます。
色留袖(いろとめそで)
正礼装として紹介した色留袖ですが、準礼装の場面でも着用できる場合があります。先述したとおり、色留袖の格式は、紋の数が多いほど高く、少ないほど低くなるのが特徴です。五つ紋が入った色留袖は、正礼装として着用できますが、三つ紋であれば、準礼装としても着用できるのです。
既婚・未婚を問わないことや、上半身は無地で、裾部分にのみ絵羽模様が描かれている点は、正礼装として着用する場合と変わりはありません。
色無地(いろむじ)
色無地とは、黒以外の単色で染められた、柄のない無地の着物のことを指します。紋の有無で格式や着用シーンが変わるのも特徴の一つで、フォーマルでもカジュアルでも着用できる可能性があります。
<紋の有無による格式の違い>
- 紋を一つでも入れた場合:準礼装として着用できる
- 紋なし(無紋)の場合:外出着や習い事などで着用できる
普段着であれば無紋でも問題ありませんし、色無地に一つでも紋を入れたら、準礼装としてフォーマルシーンでも着用できるわけです。単色かつ無地であるため、控えめな印象を与えがちですが、格式を重んじるお茶会では欠かせない着物でもあります。
付け下げ
付け下げとは、訪問着を簡略化した着物のことで、同窓会やお客様宅へ向かう際など、少し改まったイベントで、おしゃれ着として着用されます。訪問着のように、絵羽模様ではなく、柄が縫い目にかからないよう分割して配置されており、模様がすべて上向きに染められているのが特徴です。
訪問着より格式は低いですが、一つ紋を入れることで準礼装としても着用できます。
小紋(こもん)
小紋とは、全体に細かい柄や模様が入っている着物のことです。柄や模様、大きさなどが豊富で、さまざまなデザインがあるため、観劇や友人との会食といったカジュアルなシーンに適した着物と言えます。
<小紋の柄・模様の種類>
- 吉祥文様
- 幾何文様
- 王朝文様
- 飛び柄 など
古典調の柄や吉祥文様など、デザインにこだわれば、カジュアルシーンだけでなく、ややフォーマルな場面でも着用することが可能です。
「男性」がフォーマルシーンで着る着物の種類
男性がフォーマルシーンで着る着物には、「黒羽二重五つ紋付き(くろはぶたえいつつもんつき)」と「色紋付(いろもんつき)」の2つがあります。それぞれの特徴についても確認しておきましょう。
黒羽二重五つ紋付き(くろはぶたえいつつもんつき)
黒羽二重五つ紋付きは、最も格式が高い男性用の正礼装です。「黒紋付き」と省略して呼ばれる場合もあります。
フォーマルシーンでは、羽織と袴をセットで着用するのが一般的です。また、背中、両袖の後ろ、両胸元の計5箇所に紋が入っているのも特徴の一つです。結婚式で新郎が着用する衣装として知られていますが、仲人の男性が身につける場合もあります。
色紋付(いろもんつき)
色紋付とは、男性の準礼装(略礼装)として格付けされる着物です。女性の着物の色留袖と同格とされており、白やグレー、茶色、ネイビーなど色が豊富な点も共通しています。シックなカラーで統一すれば、フォーマルなシーンで着用することも可能です。
ただし、あくまでも準礼装であるため、披露宴のお色直しや二次会などで着用する程度に留めておくのが懸命です。
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今回は、フォーマルシーンにふさわしい着物の種類や特徴を解説してきました。着物には、さまざまなタイプがあるため、TPOに合わせて適切な装いを選ばなければなりません。
今回の記事で、「正礼装」と「準礼装」の中から、フォーマルシーンに適した着物が見つかった人も多いでしょう。ただし、着物の種類が決まりリサーチしていく中で、高額な購入費用が気になってしまう人も少なくありません。
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