日本には伝統的な美しさを持つ着物がさまざまありますが、「大島紬」もそのひとつです。ただし、大島紬と一口にいってもいくつか種類がありますので、その中で良い大島紬を見分けるためには正しい知識が必要だといえます。
今回はそんな大島紬についての概要や特徴、種類などの基本的なことから、良い大島紬を見分ける方法、その他の紬との見分け方などをご紹介します。着物好きな方、価値のある着物の見分け方を知りたい方はぜひ参考にしてください。
大島紬とは
まずは「大島紬」についての基本的な知識をご紹介します。日本の着物にはさまざまな種類の布地が使用されていますが、その中でも特に有名なものが大島紬だといえます。
光沢としなやかさが特徴の大島紬は、フランスのゴブラン織、イランのペルシャ織と並んで「世界三大織物」のひとつに数えられ、日本を代表する織物です。
鹿児島県奄美大島発祥の絹織物「大島紬」
大島紬と呼ばれるものには主に2種類あります。鹿児島県の奄美大島で作られたものは「本場奄美大島紬」、他の土地で生産されたものは単に「大島紬」と呼ばれます。本場奄美大島紬は1300年の歴史を持つ布地であり、絹糸を泥染めやテーチ木染めで先染めして織り上げるという手法を用います。
中でも泥染めは、世界中で奄美大島のみで行われている天然の染色方法として知られています。深く光沢の美しい黒色に染まり、 手触りはしなやかで色褪せしにくく、シワにも強いという特徴があります。
大島紬ならではの大きな特徴は「十の字絣」
大島紬ならではの大きな特徴として「十の字絣(かすり)」という模様があります。糸の先染めは手で丁寧に行われるため、染まっている部分と染まらない部分があり、それがそのまま布地にも表れるのです。この十の字絣という模様は「飛び白」とも呼ばれていますが、大島紬だけが持つ独特な柄だといえるでしょう。
大島紬の種類は約84もある
大島紬には色合い(染色)別が6種類あり、糸の配列による組織(マルキ等)別では14種類あります。これらを掛け合わせると約84種類あることになります。こちらでは、本場奄美大島紬の代表的な種類をご紹介しましょう。
【本場奄美大島紬】代表的な色の種類
本場奄美大島紬の代表的な色合いは次の5つです。染色に使っている原料や染色方法がそれぞれ異なり、独特な色合いとなっています。
泥大島 | テーチ木泥染法によって染色した糸を使った伝統的な高級紬。しっとりとした深い光沢、黒の地色、薄茶の白絣が特徴。 |
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泥藍大島 | 植物の藍で染色した糸をテーチ木・泥染で染色したもの。地色は渋い黒地、絣柄は藍色で上品な印象が特徴。 |
草木泥染大島 | テーチ木や藍以外の天然草木染料で染色した糸を使った紬。 |
色大島 | 化学染料を使って色絣模様に染色した紬。明るくモダンな柄などデザインや色合いが豊富。 |
白大島 | 地糸は白糸を使い、白糸に絣模様や、先染め糸を柄締めとして使い模様を出した紬。 |
【本場奄美大島紬】代表的な柄の種類
本場奄美大島紬の代表的な柄色合いは次の5つです。一色染めの地糸と、先染めされた絣糸を使い織り上げられる大島紬は、他の織物と比較しても非常に繊細な柄となるのが特徴だといえます。
龍郷柄 | モチーフは「月の光にキラキラ輝くハブの背模様」と「奄美の花である蘇鉄」。作られた村名(龍郷村)から「龍郷柄」と名付けられた。 |
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秋名バラ | モチーフの「バラ」とは、奄美大島の方言で「竹の網」のこと。黒のザルの格子柄に十文字が交差している。現在は織り手が少なく稀少な柄。 |
西郷柄 | 格子に十字絣が入り、主に男物に使われる柄。高品質・高技術で作られていたため「西郷隆盛」の名にあやかって名付けられた。 |
有馬柄 | この柄を考えて作った職人の名前が由来の柄。伝優柄、万太郎柄といった作者名が由来のものがほかにもある。 |
亀甲柄 | 亀の甲羅をモチーフにした柄。反幅に亀甲柄が多く入れば入るほど高級で稀少になる。 |
良い大島紬の見分け方とは?
前述の通り、大島紬と呼ばれるものには主に2種類あり、鹿児島県の奄美大島で作られたものは「本場奄美大島紬」、他の土地で生産されたものは「大島紬」と呼ばれます。またその高級さ、稀少さから、大島紬には偽物も存在します。そのため、良い大島紬を探す際には注意が必要です。
こちらでは、良い大島紬の見分け方として2つの方法をご紹介します。
【良い大島紬を見分けるポイント2つ】
- 証紙の確認
- 生地そのものの確認
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
良い大島紬の見分け方①証紙を確認する
本場奄美大島紬は、国の伝統的工芸品に指定されています。 さらに、商標「地球印」と織口文字「本場奄美大島紬」は連合商標として意匠登録済み です。本物と偽物のどちらなのかわからない時は、これらの伝統証紙、地球印の商標、産地証紙などが製品につけられているか確認しましょう。
【本場奄美大島紬の証紙】
伝統証紙 | |
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地球印の商標 | |
産地証紙 | |
草木泥染証紙 | |
泥染証紙 |
いい大島紬の見分け方②生地を確認する
証紙などがない場合には、生地そのものを触り、本物か偽物かを判断することも可能です。ただし、大島紬についての知識が少ない方は、証紙の有無で判断することをおすすめします。
【本物の大島紬の生地の特徴】
- 絹100%(正絹)
- 布地がつるつるしている
- 衣擦れ時にシャリシャリという音がする
- 織りに、糸玉のような節が存在しない
- 先染め織りである
大島紬とその他の紬との見分け方
大島紬の本来の生産地は、鹿児島県奄美大島と鹿児島市の2ヶ所になります。しかし、その美しさと人気の高さから、実際には他の場所でも生産されています。また、似たような呼び名の紬も存在します。
こちらではそのようなほかの紬と、大島紬の見分け方についてもご紹介しましょう。
韓国産大島紬との見分け方
半世紀ほど前、大島紬が全盛期だった頃に、韓国でも大島紬が織られていたことがあります。見た目は本物と大きく変わらないため、一般の方では見分けがつかないことが多いでしょう。韓国産のものは手触りがゴワゴワしていて、染色具合も繊細さに欠けて見えるのが特徴です。
本場奄美大島紬の場合、その大きな特色として「本泥染」を行っていますが、工房自体も現在は少ないため、反物も稀少なものとなっています。独特なツヤや色合い、手触りなどの違い、価格の安さなどで本物と偽物の見分けができるかもしれません。
【韓国産大島紬と本場奄美大島紬の違い】
韓国産大島紬 | 大島紬 | |
手触り | ゴワゴワ | つるつる |
染色 | 繊細さに欠ける | 緻密で繊細 |
村山大島紬、結城紬との見分け方
大島紬と呼び名が似ているもののひとつに「村山大島紬」というものがあります。こちらは東京都武蔵村山市で生産されている紬で、見た目や柄などが大島紬と一見似ているため、一緒にされてしまうこともあります。
しかし、実際にはそれぞれ別物です。どちらも縦横絣が大きな特徴ではありますが、本場奄美大島紬は手織り、一方の村山大島紬は機械織という違いがあります。この違いは価格にも影響を与えていますので、手に入れやすさにも違いが生じることになります。
見分け方としては、見た目が非常に似ていることから、証紙を確認するのが確実でしょう。
【村山大島紬と本場奄美大島紬の違い】
村山大島紬 | 大島紬 | |
織り方 | 機械織り | 手織り |
価格 | 安価 | 高価 |
結城紬は、大島紬に並ぶ日本三大紬のひとつです。 結城紬と大島紬の違いとしては「糸」「絣の作り方」「染色方法」などが挙げられます。見分ける際の参考にしてください。
【結城紬と本場奄美大島紬の違い】
結城紬 | 大島紬 | |
糸 | 生糸 | 手紡ぎ糸 |
基本的な染色方法 | テーチ木泥など | 藍 化学染料など |
その他 | つるりとした触感、細かな絣模様、生地が軽い | 生地が厚くてしっかりしている、蚊絣・亀甲絣が有名 |
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日本三大紬、さらには世界三大織物のひとつとして数えられる大島紬。その伝統的な生産方法と高い技術から稀少価値が高く、偽物が多く出回っていた時期もあります。また、村山大島紬など似た織物と見分けることが難しい場合もあるでしょう。ご紹介したポイントを押さえて、ぜひ良い大島紬を選んでください。
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